小豆島自然工房の天達さんに出会ったばかりの頃、
56というのは何なんですか?と尋ねてみました。
「それはゴローと読みます。五郎です」と教えてくれました。
「ああ、天達五郎さんというんですね。」
「いえ、名前は慶隆ですが」
わけがわかりませんが、つまりはドラマ「北の国から」の黒板五郎に憧れて
普段は五郎と名乗っているということでした。
そういう人ですから、生き様は自然派で、服装から何から野性味に富んでいます。
しかし、以前にも書きましたが小動物のような目をしていて、
話をしてみると、気の優しい女の子のようです。
普段はオリーブの木の匙やペンダントなどを作っている他、
お寺の木の手入れや、森の下草刈りや間伐など、林業のお仕事もしています。
木に関することなら何でも屋さんなのです。
森の中の工房で作っているのは、今はまだ匙やアクセサリーなどの小物類ですが、
「いつか木の家具なども作りたいと思っています。少しずつ集めている材木が
集まり次第、ちゃんとした工房を自分で作ります。それからツリーハウスを作って…」
「ツリーハウス?」
「生きた木を基礎にして、木の上に家を作るんです。そして、村を作りたい。」
「村?」
「村。コミュニティ。島を訪れた人や、島の方でも、自然や森を体感するきっかけになったり、
子供はもちろん、大人も童心にかえる場所。そういう空間を提供できたらと、おぼろげに…。
まずはツリーハウスの小型の、寝泊りもできるゲストハウスっぽいものを。」
芸術祭期間は、ツリーハウスのプロトタイプとでもいうべきツリーデッキを、
小豆島の中山地区の棚田の上のあたりに作っていました。
訪れた子供たちが大喜びだったそうです。それはそうでしょう。
「短期間で、手近な材料だけで、よくここまで作りましたね!」
「いやー、ちょっとした手遊びですよ。」
「いつまでもここにあるんですよね?」
「近いうちに撤去します。」
「なんで?」
「この場所は、ご好意で貸していただいただけですから。
芸術祭が終わるのにあわせて取り外す約束になっています。
今回、木こりの師匠と2人で2日間の突貫作業で制作したもので、
長期維持できるような作りはしていないので、メンテナンスも大変
ですからね。」
このツリーデッキは間もなく姿を消してしまいますが、
いつか小豆島の森の中に木の家具が並び、ツリーハウスができて、
森に生きる人たちのコミュニティができる、そんな日が・・・
「来るんですかね?」
「いずれ、木が熟したらね。」