ある週末の夕方。ことでん高松築港駅に行き、
ホームに入ると左手は玉藻城の石垣。
ホームのちょっと奥にいくと、お堀で鯛が泳いでいるのが見える、けっこうワイルドな駅です。
ここから黄色い琴平線に乗ってみる。
約15分乗って、仏生山駅で降ります。横のホームには、きな子電車がとまっていました。かわいいです。
駅を出てみます。もう暗くなってきました。
駅のすみに、レトロ電車がとまっています。この電車は大正15年(1926年)に製造された琴電300号。
近代化産業遺産に認定されている逸品です。いまでも時々イベントで走っています。今日は中のライトがついています。
裏に回ってみると、入口に「1500円 ワンドリンク&仏生山温泉入浴券つき」と書いています。
仏生山温泉というのは、仏生山駅からあるいて10分のナイス温泉。
電車の中に入ってみる、いや、乗車してみると満員電車。何かがはじまる雰囲気。
そうです。今日はレトロ電車のなかでライブをやる日なのです。「毎度ご乗車ありがとうございます」と仕掛人の挨拶。
最初はシタールとタブラ。インドの民族音楽です。レトロ電車とインド音楽。時空を超えたコラボです。
タブラは地元の井上真輔さん、シタールは岡山から野崎伸二さん。
次は、園田游さんの前衛舞踊。電車という超日常の空間が一気に別世界へ。乗客が固唾を飲んで見つめる。
そして今日のメインアクトは、チューバ。あの大きな管楽器、チューバのソロです。
吹いているのは、大阪から来た高岡大祐さん、チューバ一本で国内外をツアーしています。
チューバのソロ、と聞いてもイメージが沸かないでしょう。本物を聴いてもらうしかないのですが、1時間半ほどの演奏、まったく飽きません。
こんなにいろんな音が出る楽器だったのか、と誰もが驚きました。
映像もどうぞ。
最後は、車両の真ん中で、生音で吹き語り。
乗客は、ここまで同じ電車で旅をしてきた仲間のような連帯感。みんな笑顔。
おそらく世界でたった一人、チューバという楽器の可能性を開拓し続けている高岡さんのブロウに誰もが驚き、襟を正し、聞き惚れ、最後は笑顔で温泉へと帰っていきました。
電車のなかでナマの音楽を聴く。
ヘンなようで、たとえばニューヨークの地下鉄ではよくミュージシャンが演奏していますよね。
音楽との距離がライブハウスより近い。お客さんどうしの距離も近い。じつは、電車ってライブ向きな場所なんです。
電車は毎日同じ時間に同じルートを走る、単調な乗り物かもしれません。
ただ、そんな電車が時々ライブ会場になったら、普段の通勤も、ちょっと楽しくなるかもしれませんね。
いつもは讃岐平野を、のどかにことこと走っているコトデンですが、この日はニューヨークに劣らない、熱気にあふれた電車でした。
こんな魅力的な企画をみごとに実現させる人がいて、最高の演奏しに来ててくれる人もいて、電車いっぱいのお客さんが集まってくる。
楽しい街じゃないですか?
by ヤスマナ @yasmanabe